【警告】歯石除去は“ただの掃除”ではない! 〜妊婦さん・高齢者・心疾患のある方が安全に歯周病治療を受けるために〜

  • 2025.10.02
  • 健康寿命を伸ばしたい

1.はじめに:その歯石、本当に今取って大丈夫?

こんにちは、歯科医師の会田光一です。

「歯医者に久しぶりに行ったら、歯石がたくさんついてますねと言われた」

こんな経験、ありませんか?

そしてその場で「今から取っておきましょう」と、すぐにスケーリング(歯石除去)を提案されることも珍しくありません。

けれども──

「歯石を取ること」が、場合によっては重大な健康リスクにつながることをご存じでしょうか?

このコラムでは、歯石除去に潜むリスクと、安全に治療を受けるための知識を、妊婦さん・高齢者・心疾患のある方を中心に、丁寧に解説していきます。

 

2. 歯石がもたらす「見えないリスク」

歯石とは、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)が石灰化したものです。細菌の塊である歯石を放置すると、歯周病を引き起こし、やがては歯を失う原因にもなります。

ところが──

実はこの歯石を「除去する行為」そのものが、体調や状況によっては危険を伴う場合があるのです。

血流を通じて、細菌が全身へ広がることがある

歯茎の中には毛細血管が密に走っており、歯石除去で歯ぐきが出血すると、そこから細菌が血管内へ侵入してしまうことがあります。これにより、

  • 敗血症
  • 感染性心内膜炎
  • 誤嚥性肺炎

といった、命に関わる疾患を引き起こすことも報告されているんです。

 

3. 歯石除去に注意が必要な3タイプの人

特に以下の3タイプの方は、いきなりの歯石除去を避けるべきです。

心疾患がある方(とくに弁膜症・手術歴あり)

心臓の弁に病気がある方や、弁膜の手術を受けた方は、口腔内の細菌が血流に乗って心臓に感染(感染性心内膜炎)を起こすリスクがあります。

対応策:

  • 歯石除去前に歯ぐきの炎症を抑える
  • プラークコントロール(ブラッシング指導)を先に実施
  • 医師と歯科医の連携が必須(必要に応じて抗生剤予防)

炎症がある歯ぐき=細菌が血管から流れていきやすい という状態なので、まずは歯ブラシによるプラークコントールで炎症をなくすことが重要になるんです。

妊娠中・妊娠予定の女性

歯周病の妊婦さんの口腔環境は、早産・低体重児出産のリスクと深く関係していることが分かっています。

対応策:

  • 妊娠前の段階で口腔ケアを完了させるのが理想
  • 妊娠が分かったら、体調の安定する妊娠中期(57か月)に歯科検診を受ける
  • 一度に大量の歯石を取らず、数回に分けて行う

高齢者(特に誤嚥性肺炎のリスクがある方)

高齢者に多い「誤嚥性肺炎」は、口腔内の細菌を誤って肺に吸い込んでしまうことで起こります。

対応策:

  • 体調の良いときに処置を受ける
  • 一度にまとめてではなく、少しずつ分割で除去する
  • 飲み込み機能が低下している場合は医師の指導の下で治療を進める

 

4. 安全に歯石除去を進めるための3つのステップ

 

STEP 1:プラークコントロールで歯茎を落ち着かせる

いきなりスケーリングをするのではなく、まずは毎日の歯磨きを正しく行う指導を受けましょう。これにより歯ぐきの炎症が収まり、出血のリスクが減少します。

 

STEP 2:歯周病の検査を実施

炎症が落ち着いた段階で、歯周ポケットの深さなどを測定し、歯周病の進行度を確認します。これに基づいてスケーリングのスケジュールを決定します。

 

STEP 3:少量ずつ丁寧に除去する

一度にすべての歯石を除去するのは避けましょう。体調や年齢に応じて、24回程度に分けて丁寧に行うのが安全です。

 

5. 歯石の種類と、危険な歯石の見分け方

白い歯石

歯ぐきの上についた歯石。比較的リスクは低めですが、放置すれば歯周病の原因になります。

黒い歯石

歯ぐきの中(歯周ポケット)に形成される歯石で、強い悪臭と高い細菌密度が特徴。自己判断で取ろうとせず、歯科医院で慎重に除去してもらう必要があります。非常に硬いです。

 

6. 予防のために若いうちからできること

  • 3ヶ月に1度の定期検診を習慣化とクリニーング
  • 自分に合った歯ブラシの当て方を身につける
  • 痛くなる前に通う歯医者さんを見つける

 

7. まとめ:歯石除去は「命を守る治療」でもある

歯石除去は、単なるクリーニングではありません。

それは時に、命に関わるリスクを伴う医療行為です。

だからこそ──

  • 妊娠を考えている女性
  • 心臓に病気がある方
  • 高齢で体力に不安がある方

こうした方々が安心して歯周病治療を受けられるように、慎重に段階を踏んだ診療を選択することが何より大切です。

皆さんに知って頂きたいのは、ご自身の身体の状態や通院歴などを歯医者さんで伝えて欲しいということです!
もちろん歯科医療従事者から確認すべきことではあるのですが、万が一もあるのでご自身で先に話をすることは大事になります。

また、中には「とにかく早く歯石をとりたい」「早く治療をしたい」と訴える方もいらっしゃいます。お気持ちはわかるのですが、プロがリスクを考えた上で判断することに是非耳を傾けて頂ければと思います。

歯医者さんには「急がず、丁寧に進めてほしい」と伝えることが、あなたとご家族の健康を守る第一歩です。