子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング

  • 2022.08.13
  • お子さまの口育

口腔機能トレーニングをする親子の画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

子どもの「口腔機能発達不全症」が増えている

みなさんは、「口腔機能発達不全症」という言葉を聞いたことはありますか?

ここ10年くらい、日本では、お口の発達が不十分な子どもがとても増えています。発達不十分なまま成長してしまうと、常に口をポカンと開けた状態になり、口呼吸をする癖が定着してしまいます。

口を開けている女児の画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

口呼吸は虫歯や歯周病などお口の病気を引き起こすだけでなく、姿勢の崩れ、思考力や集中力の低下、顔貌の不成長(顔の下半分がだらんとした顔立ちになる)、感染症やアレルギーなどの病気のリスク増加…と、さまざまな影響を引き起こします。

お口の発達を促すことは、大切なお子さまの健やかな成長にとって、非常に重要です。

口腔機能発達不全症については、下記で詳しくご説明しています。ぜひご覧ください。
口腔機能発達不全症とは?徹底解説!|歯科医師会田の噛み合わせメディア~カムシル~

 

「口腔機能発達不全」チェックリスト

お口の発達は乳児期にミルクを飲むところから始まり、離乳食を経て通常食へ移行する間に育っていきます。最近は、上唇や舌を上手に使うことができないお子さまが多いです。

スプーンに固形の食べ物をすくい、お子さまの下唇にそっと乗せてみてください。スプーンは床に水平のまま、ただ置くだけです。置いたらスプーンは動かしたり傾けたりしないでください。お子さまが上唇を使ってスプーンを口に含み、食べ物をお口の中に取り込めるか確認してみてください。次のような動きが見られたら、「口腔機能発達不全症」の傾向があります。

・上唇をうまく使って取り込めない
・舌が前に出てしまう
・吸うように食べ物を取る
・下を向いてに頭全体で食べ物を取る

文字だけだと、具体的にどんな食べ方が口腔機能不全なのかわかりにくいかもしれないので、下記の日本顎咬合学会の動画をご覧ください。

食事をうまく食べられない子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

動画はこちらhttps://kokumin.ago.ac/movie/(日本顎咬合学会より)

子どもたちの口腔機能発達不全が増えている状況に、警鐘を鳴らすために作成された動画です。スプーンから食べ物をうまく取り込めない、口に入っても飲み込めないなどの問題が見られます。

また、「口腔機能発達不全症」の特徴として、次のようなことも挙げられます。

【離乳完了前】
・先天性歯(出生時や生後1〜2ヶ月以内に生えた歯)がある
・唇や歯槽(歯の根がはまっている穴)の形態に異常が見られる
・舌小帯(舌の裏側のヒダ)に異常が見られる
・乳首をしっかり口に含むことができない
・授乳時間が長すぎる、短すぎる
・哺乳料や授乳回数が多すぎる、少なすぎる、ムラがある
・離乳しているが首の据わりが確認できない
・スプーンを舌で押し出す状態が見られる
・安静時にずっと口を開けている
・痩せている、肥満である
・口、鼻、頬、顎などに触れると顔を背けたり緊張したりする

口を開けている子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

【離乳完了後】
■ご飯を食べるときに異常が見られる
・歯が生えるのが遅い
・歯列や噛み合わせの異常
・重度の虫歯がある
・強く噛み締められない
・咀嚼時間が長いあるいは短い
・左右どちらかに偏って咀嚼している
・唾液を飲み込むときに舌が突出している
・哺乳料や食べる量、回数が多すぎたり少なすぎたりする、ムラがある

■話すときに異常が見られる
・構音に障害がある(音の置換、省略、歪みがある)
・安静時にずっと口を開けている
・口腔習癖がある(指しゃぶり、舌を出す、舌で前歯を押す、唇を噛む・吸う、など)
・舌小帯(舌の裏側のヒダ)に異常が見られる

■その他
・痩せている、または肥満である
・口呼吸をしている
・口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)などに肥大がある
・睡眠時にいびきがある

食事を頬張る子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

「うちの子に当てはまる!」と思うものはありましたか?または「子どもではなく自分に当てはまる…」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

でもご心配なく。お口はいつからでも鍛えることができます!もちろんお子さまだけでなく、お母さん・お父さん、おじいちゃん・おばあちゃんも大丈夫。お口から物を食べるための筋肉は、いくつになっても大切なのです。

 

「口腔機能発達不全」はトレーニングでいつからでも改善できます

子に離乳食を食べさせる女性の画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

小児期(3歳〜10歳頃)にトレーニングがしっかりできれば、お口周りの筋肉が正しく機能して、そのお子さまにとって、もっとも理にかなった美しい顔面の成長へつながります。もちろん美しい歯並びの発育にも関係します。

大人になってからも、お口周りの筋力は大事です。統計的に、舌の筋力は全身の筋力と相関関係があるとされています。いつまでも若々しい方は、お口の筋力が弱っていません。お口周りの筋力の強さ・筋肉の正しい使い方は、食べ物を噛んだり飲み込んだりするだけではなく、歯科矯正などで噛み合わせの改善を図るときも重要です。筋肉が弱いと、治療後に後戻りしたり、治療自体が上手くいかなかったりするのです。

お口の筋力が弱っているかについては、私の医院をはじめ、調べられる医療機関が増えてきました。私の医院でも簡単な検査と専門スタッフによるチェックを行い、お口の状態を小まめに確認しています。

お口の筋力が弱っていると診断された方、先ほどの「口腔機能発達不全」に当てはまる方、ご自身で気になる方は、ぜひ今日からご家族みんなで「口腔機能トレーニング」を実践してみてください。

コツは楽しく長く続けること。つらくならないように、回数は少なめでOK。毎日ではなくてもOK。お口は生きていく上で大事な機能だからこそ「楽しく長く続ける」のがポイントです!

 

親子ですぐできる「簡単トレーニング」

口腔機能発達トレーニングをする親子の画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

1:あいうべ体操
顔全体を大きく動かすように「あー」「いー」「うー」「ベー」と繰り返します。最初は無理せず1〜2回でOK。「きらきら星」の曲に合わせて「♪あーあーいーいーうーうーべー」と歌いながら楽しむこともできます。

2:スープを冷まそう
熱い食べ物や飲み物を「フーフー」と冷ましましょう。吹くときの力加減のトレーニングにもなります。

3:お皿舐めトレーニング
お皿に食べ物を塗って、舐め取る練習をします。お家での舌トレーニングに。(お外でやらない約束も忘れずに(笑)!)

4:ブクブクうがい
歯磨き後のうがいで上唇、下唇、右頬、左頬を順番に思いっきりふくらませて、よくブクブクさせましょう。

口をぶくぶくさせる子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

5:アップップ!
ぜひ親子で一緒にやってみてください。思いっきり頬を膨らませたり、唇を尖らせたり、お子さまが楽しくマネできるよう、いろいろな表情を作ってみましょう。

6:巻き舌・音鳴らし
舌の形を変えてみたり、舌を上顎に吸い付けてから落として「ポン!」と音を鳴らしたりします。

7:唇プルプル
唇を使ってプルプルプルと音を鳴らします。唇を振動させるイメージです。

8:顔マッサージ
お子さまの頬を両手で優しく包み、グルグルとマッサージしてあげましょう。

 

お菓子やおもちゃを使って「楽しくトレーニング」

風船を膨らませる子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

1:風船やビーチボールをふくらませよう
100円ショップで売っているものでOK!安全のため、必ず保護者の方が見守りながら行ってください。

2:フーセンガムをふくらませよう
フーセンガムは噛む力を鍛え、舌と唇もしっかり使えるトレーニングになります。最後にガムを飲み込まないように注意してください。

3:笛ラムネ
唇を使い、フーと吹く練習をします。唇でラムネを挟んで保持するので、力を使います。

4:ろうそく消し・風車まわし
2〜3歳のお子さま向けです。フーと吹く練習になります。思いっきり吹いてみましょう。

5:ラッパのおもちゃ
一般的には生後8ヶ月頃から1歳くらいで吹けるようになる子が多いです。月齢が低いうちは舐めたり、おとなが吹いて見本をみせてあげたりして遊んでみてください。

 

お口の発達に影響!食事中の「4つのポイント」

食事を摂る子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

トレーニングをするだけでなく、日々の食事で次の4つに気をつけることでも、お子さまのお口の発達を促すことができます。

1:猫背を防ぐ
猫背だと、お口の筋肉は発達しにくくなってしまいます。自立して座れるようになったら、足の裏が必ず床に着くように、テーブルとイスの高さを調整しましょう。(床に座る場合は、正座でもOK)

2:食事の環境を整える
食べ物をよく見ながら食事ができるように、環境を整えることも大切です。テレビを見たりスマホをいじったりせずに食事をするようにしましょう。これは大人が見本を見せる必要があります。

3:水やお茶は食前・食後に飲む
食事中はできるだけ、食卓に水を置かない方がよいです。よく噛まずに流し込んで食べる癖をつけないためです。水やお茶は食前、食後に飲むのが好ましいです。アニメ「サザエさん」の団欒シーンを見てみると、食事中はよく噛むことに集中して、食後に皆でお茶を飲むという古き良き習慣が残っています。

4:前歯でしっかりかじり取る
乳歯の奥歯が生えてきたら、食べ物をしっかり前歯でかじり取ることを意識させましょう。食材を細かくしすぎてしまうと、「前歯でかじり取って奥歯ですりつぶす」という正しい咀嚼の連携を学習しにくくなります。前歯でしっかりかじり取ることで顎が成長し、歯並びの悪化や口呼吸を防げます。

前歯でかじる子どもの画像|子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

いかがでしたか?
ちょっとした工夫で楽しくお口の機能を育て、健康作りにもなるトレーニング。みなさんの日常に取り入れられるものが、1つでもあったら幸いです。

お子さまやご自身のお口の筋力が一般的な目標基準より低いのか、筋力が低い兆候はあるかについても、簡単に調べることができます。ご興味のある方は、公式LINEよりお気軽にメッセージをお寄せください。

こちらも併せてご覧ください。
口腔機能発達不全症とは?徹底解説!|歯科医師会田の噛み合わせメディア~カムシル~

 

歯科医師 会田光一