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【サイナスリフトは無駄?】上あごの骨が薄くても、腫れや費用を抑えてインプラントをする方法
- 2026.07.21
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みなさんこんにちは!お口の健康から全身の健康を守る歯科医師、会田です。
「カムシル」では、みなさんがお口のトラブルで悩まないために、科学的な根拠に基づいた正しい知識をできるだけわかりやすくお届けしています。
今回は、「上の奥歯にインプラントを入れたいけれど、骨が薄いから無理だと言われた」「入れ歯にするしかないのかな……」と悩んでいる方に向けて、とても大切なお話をします。
実は、上の奥歯の骨が薄くてインプラントが難しいと言われるケースは、珍しいことではありません。しかし、医学の進歩によって、これまでは「大掛かりな手術が必要」とされていたケースでも、体への負担を抑えて、期間も短く治療できる方法が出てきています。
今回は、従来の治療法の問題点と、新しく登場している優しい治療法について、中学生や高校生のみなさんにもわかるように優しく解説します。
この記事の目次
1. 昔から行われている「サイナスリフト」ってどんな治療?
上の奥歯のすぐ上には、「上顎洞(じょうがくどう)」という鼻につながる空気の部屋(空洞)があります。
歯を抜いてから時間が経つと、この空洞が広がったり、骨自体が痩せて薄くなったりします。すると、インプラントをしっかりと支えるための「骨の厚み」が足りなくなってしまうのです。
これまでの歯科治療では、この足りない骨を増やすために「サイナスリフト」という手術がよく行われてきました。
サイナスリフトの手順
- 歯ぐきを大きく切ってめくる。
- 上顎洞の底にある薄い粘膜を慎重に押し上げる。
- できたスペースに、人工の骨のもと(骨補填材)や、自分の別の場所から取ってきた骨を詰め込む。
- 数ヶ月から1年ほど待って、骨がしっかり固まってからインプラントを植える。
どんなデメリットがある?
この方法は長く行われてきましたが、患者さんにとってはいくつかの大きな負担がありました。
- 強い腫れや痛み: 手術のあと、顔が大きく腫れたり、青あざ(内出血)ができたりすることがあります。
- 長い治療期間: 骨が固まるのを待つ必要があるため、全体の治療が終わるまでに1年以上かかることもあります。
- 高い費用: 大掛かりな手術になり、使う材料も多いため、費用が100万円を超えるなど高額になりがちです。
- 感染のリスク: 人工の材料をたくさんお口の中に入れるため、体がそれを異物とみなして、感染を起こしてしまうリスクが少なからずあります。
2. 体に優しい最新の治療法「グラフトレス・アプローチ」
「痛い手術は嫌だな」「もっと早く、安全に治せないの?」と思いますよね。
そこで注目されているのが、人工の骨をできるだけ使わない「グラフトレス(骨補填材を使わない)治療」です。
その代表的な技術が、特殊なドリルを使った「ドリリングアプローチ」という方法です。
骨を削るのではなく「寄せて集める」
通常のドリルは骨を削り取って穴を開けますが、この特別なドリルは、逆回転させることで「骨を削らずに、横や奥に押し広げて押し固める」ことができます。
これにより、次のようなメリットが生まれます。
- 人工の骨が不要(あるいは最小限で済む): 自分の骨を押し固めてインプラントの周りを囲むため、わざわざ人工の骨を大量に詰め込む必要がありません。
- 感染のリスクが低い: 自分自身の骨を使うため、体が拒絶反応を起こしにくく、術後の感染リスクを大幅に抑えられます。
- 自分の骨のパワーを利用できる: 押し固められた自分の骨には、傷を早く治したり、骨を新しく作ったりする成分(成長因子)が豊富に含まれています。そのため、治りがとても早くなります。

薄い骨を特殊なドリルを逆回転させながら削っていきます。そのスペースに太いインプラントを入れることで、テントの支柱のように安全に定着の早いインプラントを入れられます。
3. インプラントの長さは「本当に長く」なくていいの?
「でも、短いインプラントだと、すぐに抜けてしまいませんか?」と心配になるかもしれません。
実は、近年の研究によって、「インプラントが噛む力を支えるために最も重要なのは、骨と接している最初の約6ミリメートルである」ということが分かってきました。
つまり、わざわざサイナスリフトという大変な手術をしてまで、10ミリメートル以上の長いインプラントを埋める必要性は、科学的にはあまり高くないのです。
無理に長いインプラントを入れようとして大掛かりな手術をするよりも、「太さのある短いインプラント」を、最新のドリルでしっかり固まった骨に埋める方が、腫れも痛みも少なく、安全に治療を終えられるケースが多いのです。
このインプラントの置き方を、テントを張る時の支柱に例えて「テント効果」と呼ぶこともあります。
短くて太いインプラントを入れることによって、テントを破かずにしっかり支えることができ、この支えられた空間に自然と骨を再生させていくことが可能となってくるのです。

4. まとめ:時代は「身体に優しい」インプラントへ
「インプラントをするなら、まずは痛い思いをして骨を増やさなければならない」というのは、少し前の古い常識になりつつあります。
スマートフォンの技術がどんどん進化しているように、歯科医療の技術や考え方も、日々新しくなっています。今では、「人間の体が持っている本来の治癒力を引き出し、できるだけ傷口を小さく、異物を使わずに治療する」という考え方が主流になりつつあります。
もちろん、患者さんのお口の状態(骨の残り方や硬さ)によっては、どうしても骨を増やす手術が必要になる場合もあります。しかし、最初から「無理です」と諦める前に、「体に負担の少ない方法(グラフトレス治療)が選べるかどうか」を、一度信頼できる歯医者さんに相談してみることをおすすめします。
大切なご自身の体です。できるだけ痛みが少なく、納得のいく治療法を一緒に見つけていきましょう。

科学的根拠となる参考論文
本コラムの内容は、以下の学術論文などの科学的根拠に基づいています。
- Hu, X., et al. (2018)
– 論文タイトル: “Short implants (5–8 mm) versus longer implants (>8 mm) with sinus floor elevation in atrophic posterior maxillae: A systematic review and meta-analysis.”
– 内容: 上あごの奥歯の骨が薄い部分において、「短いインプラント」を使う方法と、「サイナスリフトをして長いインプラント」を使う方法を比較した研究です。短いインプラントの方が合併症が少なく、治療期間も短く、同様の生存率を示したと報告されています。
- Huynh-Ba, G., et al. (2010)
– 論文タイトル: “Short implants in the posterior maxilla: a systematic review.”
– 内容: 骨の少ない上あご奥歯へのショートインプラントの有効性を検証したレビュー。適切な診断のもとで行えば、大きな骨移植をしなくても良好な結果が得られることを示しています。
- Hu, X., et al. (2019)
– 論文タイトル: “Osseodensification for implants placed in the posterior maxilla: A systematic review.”
– 内容: 特殊なドリルを用いて骨を圧縮・凝縮しながらインプラントを埋入する技術(オッセオデンシフィケーション)に関する研究。骨の密度を高め、初期固定(しっかり固定されること)を向上させる効果が確認されています。
- Felice, P., et al. (2015)
– 論文タイトル: “One-stage versus two-stage implant placement in sinuselevated sites.”
– 内容: サイナスリフトに伴う手術回数や期間が、患者の身体的・精神的負担や合併症のリスクにどのように影響するかを調査し、手術のステップ数を減らすアプローチの重要性を説いています。





