子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ

  • 2022.06.05
  • お子さまの口育

歯並びのきれいな女の子|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

噛み合わせや歯並びに影響する「乳児期の姿勢」

噛み合わせや歯並びの悪化は、遺伝ではなく「身体の姿勢の崩れ」が原因であることがほとんどです。

私の経験的に、いくら歯科矯正の治療を施しても、なかなかいい結果が出なかったり、あっという間に後戻りしたりするケースでは、根本原因である「姿勢の崩れ」がそのままになっていることが多々あります。

そして多くの場合、この姿勢を決めてしまう環境要因は、特に乳幼児期にあると言われています。たとえば以下のようなものです。

  • 1.抱き方
  • 2.寝かせ方
  • 3.授乳方法
  • 4.靴や靴下など足の使い方

 

もちろん、大人になると改善できないというわけではありません。あくまでも最も効率的に予防できるのが幼児期であり、大人でも噛み合わせと足指の改善で、姿勢改善を図れた方が多くいらっしゃいます。

 

注目すべきは背骨のS字カーブ

ではなぜ、姿勢が歯並びに影響を与えるのでしょうか。

姿勢を決定づける背骨(脊椎)のカーブに注目しましょう。脊椎は頚椎、胸椎、腰椎、仙椎に分かれて構成されていますが、乳児期はC字のカーブだったものが、10歳頃までにS字カーブになっていきます。

脊柱の構造|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

 

しかし脊椎のS字カーブが消失した「平背」の状態、逆に脊椎のS字カーブが強まった「猫背」の姿勢が小さい頃から続くと、下顎が筋肉により後ろ向きに引っ張られてしまい、前向きに成長しません。顎がしっかり成長しないと、口腔内で歯が並ぶスペースが十分にできないのです。

それだけでなく、舌の置き場も狭くなり苦しくなってしまうので、無意識に口を開けて呼吸する「口呼吸」の癖がついてしまいます。

骨格のタイプ|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

 

妊娠中の姿勢と、授乳の体勢もポイント

お子様の正常な姿勢を作るには、お母様の妊娠中の姿勢も影響しています。

内臓下垂がないお母様のお腹の中では、胎児はしっかり丸まることができますが、内臓下垂があるとお腹の中のスペースが狭くなるため、胎児は首を反ってしまうそうです。実際、妊娠中の姿勢により、胎児の姿勢・脊椎カーブに影響が出るという症例報告も上がっています。

腰の痛みがある妊婦|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

 

そして乳児期の授乳においては、口腔内の容積を向上させる授乳姿勢と授乳方法を意識しましょう。
正しい姿勢で授乳をすると、乳児は口をしっかり塞いだ状態で、鼻を使って呼吸しつつ、噛む力につながるたくさんの筋肉を動かして、おっぱいを飲むことができます。

それと同時に、目を見張るように開けることで、脊柱のCカープや顔周りの筋肉と骨格の発育が促され、口腔の発育も良好となります。また、内臓下垂による便秘や腸の動きの悪化も改善できます。

幼児期になってからお子様の姿勢の悪化に気付いた場合、理想の姿勢に戻しただけでは、内臓下垂や口腔内の問題は改善しにくくなっていきます。このような場合はトレーニングを継続したり、歯科矯正治療を行ったりして対応します。

 

ミルクを飲む赤ちゃん|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

乳幼児にも見られる「口呼吸」と「低位舌」

歯並びが悪くなる原因として「口呼吸」や「舌の筋力不足」も挙げられます。

「口呼吸」は文字通り、鼻ではなく無意識のうちに口で呼吸する習慣です。「舌の筋力不足」は舌を支える筋肉が衰え、安静時に舌の収まる位置が下がってしまった状態です。低位舌(ていいぜつ)とも言います。

低位舌は小学生や成人だけでなく、乳幼児にも見られます。

なぜかと言うと、軟口蓋や口蓋扁桃が垂れ下がって、正常な位置でなくなってしまうためです。垂れ下がった上に、口呼吸で軟口蓋や口蓋扁桃が腫れてしまうと特に問題です。

下記の写真のように、口を開けたときにのどちんこが見えない、あるいは見えにくい場合は要注意です。

低位舌の子供の写真|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

 

原因は「おっぱいの浅飲み」と「抱っこ紐での姿勢」

なぜ乳児の軟口蓋や口蓋扁桃は下がってしまうのでしょうか?

原因のひとつに、おっぱいが口の奥まで入らない「浅飲み」状態での授乳が続くことが挙げられます。浅飲みだと、顎が上がった状態になってしまい、軟口蓋や口蓋扁桃が重力を受けて下がってしまうのです。

ふたつ目は、寝る時や抱っこの際に、首が後ろ向きに反ってしまうことです。どちらの時も、乳児の身体の特徴であるCカーブを意識してあげることがポイントです。首が反った状態が続かなければ、軟口蓋や口蓋扁桃は下がりません。

保育者の手をフリーにするため抱っこ紐を活用する方もいらっしゃいますが、乳児が首のサポートがないまま反ってしまっているケースを多く見かけます。

抱っこ紐も便利ではありますが、人間の身体の仕組みを考えると、あまりおすすめはできないと考えています。

繰り返しにはなりますが、自分の頭をしっかり支えられるようになるまで、脊椎のCカーブを守れるように、首が後ろに反らないように気を配ることがとても大事になってきます。

抱っこひもで眠る赤ちゃん|子どもの歯並びは、妊娠中〜乳幼児期の姿勢がカギ|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

 

姿勢改善が、お子様の健やかな成長に

このように、噛み合わせと歯並びは、姿勢に大きく影響を受けています。

姿勢、そしてそれに基づく呼吸パターンや循環器の動きは、全身に影響します。トータルで正しい状態にすることで、お子様の噛み合わせ・歯並びの改善みならず、心身の健やかなに成長につながるでしょう。

お子様の噛み合わせや歯並びでお悩みの方は、歯科医師会田にLINEで相談してみてください。

 

歯科医師 会田光一