歯並びは子どもに遺伝する?お子さまの歯のためにできること

  • 2023.09.18
  • お子さまの口育

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歯並びは遺伝する?答えは「いいえ」

お子さまがいらっしゃるママパパからのご相談でよく受けるのは、やはり子どもの将来の歯並びのことです。特に、矯正治療を経験しているママパパから聞かれるのが「歯並びって遺伝しますよね?」という質問。

正解は「いいえ、違います」です。

正確にお伝えすると、遺伝は2〜3割で、ほかは姿勢、食事、呼吸パターン、口元の筋肉の使い方など、その子の生活(環境要因)が歯並びに表れます。

ママパパの歯並びが悪いからといって、お子さまの歯並びが確実に悪くなるわけではないし、逆に、ママパパの歯並びが良いから「うちの子の歯並びも大丈夫!」ということでも、決してありません。

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歯1本1本の「大きさ」は遺伝する

「歯並びが良い」というのは、顎の大きさに対して歯がきちんとU字アーチを描いて生えていて、上下ともしっかり噛める状態のことを指します。

反対に「歯並びが悪い」とは、歯が重なって生えている、歯の向きが正しくない、歯が生える位置が合っていない、曲がった角度で生えている、などの状態です。それにより、前歯で噛めない、奥歯が噛めないといった噛み合わせの問題、見た目が良くないという審美的な問題など、さまざまな不具合が見られます。

遺伝に関わる部分として大きいのは、「歯1本1本の大きさ』です。歯が大きい場合、どうしても顎のスペースが足りず、歯が並びきらないことがあります。この場合は「遺伝が原因だね』と言えます。

しかし実際には、遺伝と関係ない「環境要因」が、歯並びを悪くする原因の大部分を占めています。

「現代の子たちは顎が小さくなっている」説の真相

以前はよく「現代人の顎の骨は、縄文人と比べて小さくなっている」というような話を耳にしたと思いますが、実は、顎の骨自体は大きく変わりありません。ただ、噛む力(筋力)は、現代の子は縄文時代に比べて、とても弱くなっているというのは事実です。

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「噛む力」と「歯並び」に、何の関係あるの?と思いますよね。歯は生えてくるとき、少し内側(舌側)に倒れた状態で生えはじめます。しかし、日々しっかり噛むことにより、その刺激で顎が広がり、成長とともに歯が外側に立ち上がるように生えていきます。

ですから、しっかり噛まないと顎の広がりが足りず、歯が内側に倒れたまま育ってしまうので、噛み合わせに影響が出てくるのです。現代の子は、しっかり噛むための筋肉が育っておらず、しっかり“噛まない状態”から”噛めない歯並び“へシフトしていくことになります。これが、歯並びを悪くする環境要因のひとつです。

他にも、次のような習慣が環境要因として挙げられます。

・指しゃぶりがやめられない
・頬杖をつく
・猫背
・お口がポカンと開いたまま、など

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歯並びを乱す「環境要因」を減らすポイント

歯並びが良くないのは環境要因からなのか、遺伝が関係しているのか、ママパパが見分けることは、とても難しいと思います。

そこで、まずは次の2つに注目してお子さまを見てあげることをお勧めします。

1.原因となる環境要因をなるべく減らす
2.噛む力(筋力)をしっかり育てる

お子さまの食事風景をよく観察してみてください。椅子に座って食事をする際、足はちゃんと床についていますか?猫背になったり、机が高すぎたりしていませんか?食事のとき、肘や頬杖をつきながら食べていませんか?唇をしっかり閉じたままモグモグ噛めていますか?

意外かもしれませんが、食事をする姿勢は、噛み合わせや噛む力、歯並びを作っていくのにとても重要です。まずはご自宅で、食事の姿勢を整える環境づくりをすることが、良い歯並びをつくる第一歩になります。

そうして環境要因を取り除きつつ歯科医院での定期的な検診も欠かさずに受けましょう。お子さまの歯並びの改善には、早期治療が必要な場合もあります。治療といっても、早い段階であれば、日常生活に簡単な体操などを取り込むだけで、積極的な矯正治療が不必要になることも多いです。

参考
子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜

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正しい「呼吸パターン」と「飲み込み方」が大切

お子さまの正しい歯並び・噛み合わせをつくる上で、私が特に大事にしているのは、正しい呼吸パターンと飲み込み方の習得です。これは、子どもにも大人にも共通して言えます。

正しい呼吸パターン

正しい呼吸パターンとは、無意識のうちに口で呼吸する「口呼吸」ではなく、鼻で呼吸をすることです。舌を支える筋肉が衰えると、安静時に舌の収まる位置が下がってしまいます(低位舌)。すると、軟口蓋や口蓋扁桃も下がって気道が狭くなるため、口を開けて、舌を押し下げて気道を確保しようとして口呼吸になります。口呼吸は、歯並び・噛み合わせの悪化のほかに、口腔乾燥、虫歯、歯周病なども引き起こしやすくなります。

正しい飲み込み方

正しい飲み込み方とは、舌先を上顎の前方につけたまま、奥歯を噛んで、舌全体を上顎に押し当てるようにして舌の後方を動かして飲み込むことです。簡単に述べると舌が上顎についていることが重要です。舌が上顎につかず、前歯を押しているような飲み込み方が続いてしまうと、出っ歯になったり歯列が狭いことで凹凸の多い歯並びになります。

正しい呼吸パターンと飲み込み方ができていないと、歯並びが崩れるだけでなく、仮に矯正治療をしても後戻りのリスクが高くなってしまいます。また、将来的に口元が衰えやすくなり、睡眠時無呼吸症候群やオーラルフレイルなどを発症するだけでなく、顔のシワが深くなるなど、見た目も老け込んでしまいます。

小さい頃から歯の定期検診を定期的に受けることで、お口に何か問題がありそうな場合に早期介入できる体制を整えておくことは、将来、正しい噛み合わせ・良い歯並びを得るために大切です。

噛み合わせや歯並びなどについて不安なことがあれば、歯科医師 会田までお気軽にご相談ください。お問い合わせは公式LINEより受け付けております。

下記のページもご参考ください。
「子どもの口が弱っている!?親子でできるお口のトレーニング」|歯科医師会田の噛み合わせメディア~カムシル~
「口腔機能発達不全症とは?徹底解説!」|歯科医師会田の噛み合わせメディア~カムシル~

 

歯科医師 会田光一