正しい噛み合わせは1本の歯から!ほとんどの人が知らない虫歯治療の真実

  • 2024.05.16
  • 歯の不調を治したい
  • 治療を繰り返している方へ

正しい噛み合わせは1本の歯から
〜ほとんどの人が知らない虫歯治療の真実〜

こんにちは、歯科医師の会田です。

このメディアでは、生涯に渡ってしっかり噛めることを目的とした、有益な情報を発信しています。今回は正しい噛み合わせに関わる虫歯治療についてのお話です。

正しい噛み合わせをつくり、長期に渡り自分の歯でしっかり噛めるようにするためには1本1本の歯の治療がきっちり完結している必要があることは言うまでもありません。

しかしながら、日本の虫歯治療の成績、特に歯が残せるかどうかに関わる「進行した虫歯の治療」の成績は、先進国の中でもダントツに低い結果なのです。

世界のどこでも治療の成功率が低いのであれば、「しょうがない事実だ」と受け止めることもできますが、実はそうではありません。

日本にはある特有の背景があるにせよ、これは事実です。極論を言えば、本来、正しい治療を行えば治る歯が治せずにいるのです。

1、虫歯の経過の4つのステージ

冒頭では、日本では歯が残せるかどうかに関わる「進行した虫歯の治療」の成績が低いと説明しましたが、虫歯には大きく分けて4つのステージがあります。

まず、その虫歯の経過について詳しく見てみましょう。

  • Stage1
    初期の虫歯
    歯が表面的に細菌によって溶かされた状態で、症状もありません。表面を少しだけ削ってレジンというプラスチックを詰めるか、経過観察で済まされます。
  • Stage2
    少し進行した虫歯
    歯の内部まで細菌感染が進行し、しみるなどの症状が出る場合があります。、詰め物が取れる原因にもなります。感染部位を除去し、プラスチックやセラミックなどの修復材料を詰めて補います。
  • Stage3
    内部まで大きく進行した虫歯
    歯に栄養を与えている神経・血管組織まで細菌が感染した状態。最初は痛みが強く出ますが、そのまま放置していると神経が死んでしまい症状がなくなります。歯の神経・血管組織は一度細菌感染を起こすと自然治癒することはないので、感染組織をすべて取り除く根管治療が必要となります
    大きな詰め物・被せ物での修復になることが多いです。
  • Stage4
    根っこの中まで感染した虫歯
    歯の神経・血管組織が死んでしまい根っこの中で細菌が繁殖した状態。過去に根管治療をした際に細菌が取り残されていてもこの状態になります。複雑な形の根っこ、また経過が長い場合は根っこの外側まで細菌が定着してしまい根管治療の成功率が下がります。

このように虫歯の段階には大きく分けて4つのステージがあります。

日本において治療の成功率が低く、問題になるのはステージ3または4の問題です。つまり、歯の内部の神経・血管組織のスペースまで細菌が感染してしまった時に必要となる根管治療の成功率が低いのです。

2、日本における根管治療の現状

一般社団法人 日本歯内療法学会
調査対象 : 根管治療(歯の神経の治療)経験者20~60代800名
(20代、30代、40代、50代、60代を男女に分け、それぞれ80名を調査
「医薬品、健康食品、薬品、化学、石油化学」「市場調査」「医療、福祉」
「出版、印刷」「メディア・マスコミ・広告業」にお勤めの方は除く)
https://kyodonewsprwire.jp/release/202309199819

出典:*Salehrabi R, Rotstein I : Endodontic treatment outcomes in a large patient opulation in the USA : An epidemiological study, J Endod, 30 : 846-850, 2004. • *須田英明:わが国における歯内療法の現状と課題. 日歯内療誌 32 1 : 1〜10, 2011

ご覧のように、日本における根管治療は45-70%が再治療となっています。

思った以上に再治療の割合が多くて驚かれたのではないでしょうか。

再治療になるということは、細菌感染により歯の周囲の骨が溶けて歯の寿命に大きく影響したり、細菌や炎症物質が血流に乗って全身に巡ることで内臓や皮膚に2次的な炎症を引き起こすことに繋がっているのです。

もちろん大半の歯科医師は、多くのケースが再治療になっていることを知っています。しかしながら「なぜそうなるのか」ということに関して、一般の方への情報提供・説明が不足しているように常々感じていました。

一言でまとめると、高い確率で治せると示されている治療手順通りに治療されていないからです。

「え、治せるものならちゃんと治してくださいよ」と思うかもしれませんね。

保険診療主体の日本において、根管治療は特に診療報酬が低く設定されていて、高い確率で治せると示されている機材や材料の投資が行いにくいという背景があるのです。

医は仁術とはいえ、世界基準と照らし合わせた時に診療報酬が全く異なるのに、同じクオリティを期待するのはさすがに酷な話です。

問題は、きちんとした説明がされないまま、患者様が知らないうちに治る確率の低い治療を「勝手に」されているという事実だと考えております。

多くの方の再治療にあたる際に、事前にカウンセリングを行いますと、過去に十分な説明がないまま根管治療を受けられた方が大半です。

気の毒なことに、日本の医療・かかりつけの先生のやることを信じて治療を受けたためにかえって状態を悪くしているのです。

このようなことが繰り返されないためには、高い確率で治せる治療法があること、保険診療では〜〜を使っている、自由診療では〜〜を使っていて治癒率がどう違うか、再治療のリスクなどを、事前に患者様に説明をすることが徹底されることです。

それと同時に、ぜひ多くの方に大切なご自身の歯を「治すためには何が重要なポイントなのか」を知って頂きたいと思います。

3、世界基準の根管治療とは

先ほどの章では、「高い確率で治せると示されている治療手順」があるとお伝えしましたが、治療の成功率を上げるために何が重要になるか具体的に説明していきます。

最も重要なポイントは無菌的な処置、徹底的な感染除去です。

虫歯は端的に言うと細菌感染による病気です。治療は細菌を生体が許容できる量以下に減らす事、その確率を高めることが成功の秘訣です。

しかし、歯の中というのは免疫細胞が働かない空間のため、自然に菌が減ったりいなくなったりすることはなく、人の手で頑張って感染源を除去する必要があります。

では、徹底的な感染除去をしているクリニックはどんなことをしているか一般の方がわかる範囲で「治る基準」をご紹介します。

・歯の補修(隔壁処置)

ボロボロに崩れた歯の状態で治療をしても、お口の中の唾液が歯に入ってしまうことがあります。

まずは、しっかり虫歯を取って歯を補修することが大切で。

、次に挙げるラバーダムというゴムのマスクが歯にしっかりと装着できる環境をつくります。この処置を隔壁処置と呼びます。

ボロボロだった歯を先に補修してくれる、または初回の治療が終わったあと鏡を見たらある程度歯のような形が出来ていたということがあればきちんと隔壁処置がされた

ということです。

・ラバーダムの使用

歯にラバーダムというゴムのマスクをかけることで完全に周囲から隔離します。

そうすることで、歯の周囲をお口の中では通常は使えない消毒液で処理することができ、治療環境が整います。

イメージとしてはお腹の手術です。術野だけが顔を出して、周囲には清潔な布がかかり、術野もしっかり消毒されてから治療が行われます。

歯の中も体の内側なのでそのような環境で治療する必要があります。

ラバーダムは顔の下半分がが覆われてしまうような大きなゴムのマスクなので一度経験されたら記憶に残るような治療です。

・マイクロスコープによる明視下での治療

感染した歯や、感染した異物を除去していく時に手探りで十分な治療は出来ません。肉眼で見ても見えるレベルの世界ではないのです。

そのため、この治療をうまく行うためには約20倍まで視野を拡大できる手術用顕微鏡=マイクロスコープが必要です。

ルーペでも十分な結果を出せる事もありますが、マイクロスコープを使用すれば見落としの可能性を少しでも減らすことができます。

根の治療をする際には、その部屋にマイクロスコープがあるか見てみましょう。

・超音波ないし音波器具による消毒液での確実な洗浄

感染源を除去するためには、感染部位を削るだけでなく消毒液での洗浄も重要になります。

しかし、歯の中は非常に狭い空間なので注射器で薬液を入れてもすみずみまで行き渡らないということが分かっています。

薬液を隅々まで作用させるために、超音波ないし音波器具を使用する必要があります。

超音波器具であればチーッという高い音、音波器具であればブーンという振動と音が響くので体感でわかります。

出典:https://www.dentsplysirona.com/en-ca/categories/endodontics/smartlite-pro-endoactivator.html

・再感染を防ぐ長期に安定的な薬

最終的に再感染を防ぐために根の中に薬を詰めます。

専門的に行なっている先生は、一般的にバイオセラミックスと呼ばれる身体に優しく、長期に安定的な材料を詰めます。

バイオセラミックスは歯の中でわずかに膨張するため、細菌が増殖するスペースを潰してくれます。

しかし、この材料は非常に高価であるため保険診療ではまず使われません。

保険診療では、コストの関係上どうしても妥協的な材料になってしまう現実があります。

出典:https://www.j-pentron.com/products/well-pulpst.html

自分の歯に向き合って自分で治療を選べるようになる3つのポイント

虫歯が進行してしまい、根管治療が必要となった場合にどうすれば良いのか?

まずは、ご自身が知識をつけて治療を選べるようになることが大事です。

その上で、やはり皆さんコストパフォーマンスというものを重要視されるでしょうか保険診療でどこまでやってくれるのかを相談することになるでしょう。

ポイントは下記の3つだと考えます。

A.先に挙げた治すための基準を知ること
B.保険診療でも少しでも多く「治る基準」を満たした治療を提供しているクリニックを選ぶこと
C.自由診療で「治る基準」を全て満たしたクリニックを選ぶこと

自由診療でもあっても、担当する医師の技量によって結果は大きく変わるので、通っている方の口コミを聞いたり術前にしっかりコンサルテーションを行ってくれて納得できる選択が行えることが大事だと思います。

医院、医師によって領域得意は違ってきますので専門性の高い医療を望む場合はセカンドオピニオンは重要です。

最近は、歯科の世界でもセカンドオピニオンを受ける方が増えています。

長期に渡り自分の歯でしっかり噛めるようにするために、ぜひ、今回の情報をご自身の選択の判断基準のひとつに役立てて頂ければ幸いです。

こちらの記事もご参照ください。

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