【2026年最新研究結果】歯を失うと老けるだけじゃない!寿命が縮む理由と今すぐできる対策

  • 2026.07.16
  • インプラント/歯を失った方へ
  • 健康寿命を伸ばしたい

みなさんこんにちは!お口の健康から全身の健康を守る歯科医師、会田です。

突然ですが、みなさんは今、ご自分の歯が何本あるか数えたことはありますか?

「虫歯で何本か抜いちゃったけれど、奥歯で見えないからそのままでいいや」 「入れ歯を作るのがなんとなく面倒で、放置している」

もし、そんな風に思っている方がいたら、今回のコラムはぜひ最後まで読んでいただきたいです。実は、「たかが歯の1本や2本」と放っておくことが、全身の健康を損ね、将来の寿命を縮めてしまうかもしれないのです。

「えっ、歯がないだけで寿命に関わるの?大げさだなあ」と思うかもしれません。でも、これは決して脅かしではないのです。近年の医学研究によって、歯の数と私たちの「栄養状態」、そして「健康でいられる寿命」には、切っても切れない深い関係があることが明らかになってきています。

今回は、国内外の信頼できる研究データをもとに、「なぜ歯を失うと寿命に影響するのか」、そして「失った歯を補うことが、どれほど全身の健康に良い影響を与えるのか」について、専門用語をできるだけ使わず、中学生や高校生のみなさんにもスッキリわかるように解説します。

 

第1章:歯を失うと、私たちの体の中で何が起きる?

まず、歯が抜けたままになっていると、体の中で何が起こるのでしょうか。
一番わかりやすいのは、「噛む力(専門用語で『咀嚼:そしゃく』と呼びます)」が落ちてしまうことです。この噛む力が衰えることが、全身のトラブルのスタートラインになります。

想像してみてください。もし奥歯がなくて、硬いものがうまく噛めなくなったら、普段の食事はどうなるでしょうか。

お肉のステーキや、シャキシャキした生野菜、リンゴなどのくだもの……これらは噛むのに力がいるため、無意識のうちに避けるようになってしまいます。その代わりに、うどんやパン、柔らかく煮込んだおかず、あるいはお菓子など、あまり噛まなくても簡単に飲み込めるものばかりを選ぶようになりがちです。

実は、これが健康にとって大きな問題になります。
アメリカで約9,000人を対象に行われた大規模な調査では、歯が21本未満の人は、お肉などの「タンパク質」や、野菜・果物から摂れる「ビタミン」「食物繊維」の摂取量が大きく減っていることが分かりました。その一方で、炭水化物や脂肪の多い食べ物が増えていたのです。

日本での研究でも同じような結果が出ており、歯が少ない人ほど、ビタミンDや、お魚に含まれる良質な油(EPAやDHAなど)が不足しやすいことが分かっています。

このように、歯を失うことで食べられるものが制限され、栄養のバランスが崩れてしまう状態を「低栄養(ていえいよう)」と呼びます。
特に年齢を重ねてからの低栄養は、筋肉を衰えさせ、病気と戦う免疫力を下げてしまうため、体を壊す大きな原因になってしまうのです。

第2章:データで見る、歯の数と寿命のリアルな関係

「栄養が偏るのは分かったけれど、それが本当に寿命と関係あるの?」と不思議に思う方もいますよね。ここで、少し驚きのデータをご紹介します。

私の母校である東京科学大学(旧・東京医科歯科大学など)が発表した大規模な研究(2026年発表)があります。全国の高齢者約6万9,000人を対象に調査したところ、お口の健康と寿命の間に、はっきりとした関係が見つかりました。

なんと、自分の歯が20本未満の人は、20本以上残っている人に比べて、死亡リスクが有意に高くなっていたのです。特に男性や、もともと心臓の病気を持っている方、あるいは気分が落ち込みがちな方において、その影響がより強く出ることが確認されました。

また、別の研究では、65歳の時点で「歯が20本以上ある人」と「歯が1本もない人」のその後の寿命を比較しています。
それによると、歯が全くない人は、歯がしっかり残っている人に比べて、男性で約2.4年、女性で約2.2年も寿命が短いという結果が出ています。

2年以上の差というのは、健康を考える上で決して無視できない大きな数字です。
なぜこれほどの差が出るかというと、先ほどの「低栄養」に加えて、以下のような悪循環が起こるからだと考えられています。

  • しっかり噛めないことで、脳への刺激が減り、認知症のリスクが高まる
  • 噛み合わせがズレて体のバランスが崩れ、転びやすくなる(骨折などの原因に)
  • お口の中の細菌が肺に入り込み、誤嚥性(ごえんせい)肺炎という命に関わる病気を引き起こす

「歯を失うことは、全身の健康寿命を少しずつ削っていくことにつながる」。この事実は、科学的なデータからも証明されつつあるのです。

 

第3章:あきらめないで!失った歯を補うことのメリット

ここまでは少し怖いお話をしてしまいましたが、安心してください。今からできる対策はたくさんあります。
もしすでに歯を何本か失ってしまっているとしても、「もう手遅れだ……」と落ち込む必要は全くありません。

なぜなら、歯科医院で「失った歯を補う治療(入れ歯、ブリッジ、インプラントなど)」をしっかり行うことで、この悪循環を食い止めることができるからです。

研究によると、自分の歯が少なくても、自分のお口にぴったり合った入れ歯などを入れてきちんと噛めるようにすれば、硬いものや繊維質の多いものもまた食べられるようになります。
実際、入れ歯を作ると同時に食事のアドバイスを受けた方は、栄養状態が大幅に改善したというデータもあります。きちんと噛めるようになれば、タンパク質やビタミンをしっかり吸収でき、筋肉の衰えを防ぐサポートになります。

北海道大学の研究でも、「残っている歯の数が同じように少なくても、入れ歯などで適切に治療している人は、放置している人に比べて栄養状態が良い」ということが分かっています。

一番避けていただきたいのは、「歯が抜けたところをそのままにしておくこと」です。
「入れ歯は違和感があるから」「面倒だから」と感じる気持ちもよく分かります。しかし、合わない入れ歯は歯医者さんで調整や作り直しができますし、他にもインプラントなどの選択肢もあります。
今、ほんの少しの勇気を出してお口のケアに向き合うことが、5年後、10年後の元気に大きな差となって返ってきます。

 

第4章:これ以上失わないための「予防」こそ、一番の健康投資

そして、何よりも大切にしていただきたいのが「予防」です。

みなさんは「8020(ハチマルニイマル)運動」という言葉を耳にしたことはありますか?これは「80歳になっても、自分の歯を20本以上保とう」という、国や歯科医師会がすすめている活動です。
なぜ「20本」なのかというと、自分の歯が20本以上残っていれば、ほとんどの食べ物を自分の力でしっかり噛み砕いて味わうことができるからです。

入れ歯やインプラントなどの治療はとても優れていますが、やはり神様からもらった「ご自身の生まれ持った歯」に勝るものはありません。
だからこそ、今ある大切な歯をこれ以上失わないように守ることが、最も効果的なアンチエイジングであり、将来への健康投資になります。

毎日の丁寧な歯みがきはもちろん大切ですが、自分では落としきれない汚れもあります。お口に痛いところがなくても、3ヶ月から半年に1回は歯科医院に行って、プロによるクリーニングや、虫歯・歯周病のチェックを受けてみてください。

「歯医者さんは痛くなってから行く場所」ではなく、「大切な歯と健康を守るために通う場所」へと、ぜひ意識をアップデートしていただけたら嬉しいです。

 

今回のまとめ

お口の健康と寿命について、ポイントを整理してみましょう。

  1. 歯を失うと、噛めないものが増えて「低栄養(栄養不足・偏り)」になりやすい
  2. 歯が少ない人ほど、将来の死亡リスクが高まるという研究データがある
  3. 抜けた部分を入れ歯などで治療すれば、栄養状態はしっかり改善できる
  4. 今ある歯を失わないための「定期的な歯科検診(予防)」が一番大切!

もし最近、歯医者さんに行っていないなと感じる方や、気になるところを放置している方は、ご自身の未来の健康のために、ぜひ一度お近くの歯科医院に相談してみてくださいね。

お口の健康は、あなたが何歳になっても美味しいものを食べ、元気に歩き、大切な人と笑顔で会話するための「土台」です。これからも一緒に、健康なお口づくりをしていきましょう!

 

科学的根拠(参考論文リスト)

  1. 東京科学大学(旧東京医科歯科大学)による大規模調査(2026年)
    Tani, Y., Matsuyama, Y., Jages Group., & Aida, J. (2026). Tooth loss, cardiovascular disease, and all-cause mortality: The JAGES cohort study. Journal of Epidemiology, 36 (1), 45-52. doi:10.2188/jea.JE20250099
  2. 米国NHANES調査に基づく栄養摂取の研究(2003年)
    Nowjack-Raymer, R. E., & Sheiham, A. (2003). Association of edentulism and number of natural teeth with dietary intake in US adults. Journal of Dental Research, 82 (2), 123-29. doi:10.1177/154405910308200209
  3. 残存歯数と寿命・健康寿命の関連に関する研究(2011年)
    Aida, J., Kondo, K., Hirai, H., Subramanian, S. V., & Osaka, K. (2011). Association between dental status and all-cause mortality in an Japanese elderly population. Community Dentistry and Oral Epidemiology, 39 (3), 222-31. doi:10.1111/j.1600-0528.2010.00588.x
  4. 義歯(入れ歯)使用と栄養状態に関する北海道大学等の研究(2015年)
    Sato, Y., Minami, K., & Yamazaki, Y. (2015). Influence of denture wearing on nutritional status in elderly semi-dependent nursing home residents. Journal of Prosthodontic Research, 59 (2), 114-21. doi:10.1016/j.jpor.2015.01.002