- ホーム
- 投稿記事
- 歯の不調を治したい
- 治療を繰り返している方へ
- 【約50%が失敗する】なぜ何度も再発?治療長引...
【約50%が失敗する】なぜ何度も再発?治療長引く?根の治療の裏側と、失敗しない歯科医院の選び方
- 2026.07.23
- 歯の不調を治したい
- 治療を繰り返している方へ
こんにちは!お口の健康から全身の健康を守る歯科医師、会田です。
「カムシル」では、皆さんが一生自分の歯で美味しくご飯を食べ、健康に暮らせるためのヒントを分かりやすく発信しています。
突然ですが、今、歯医者さんに通って「歯の根っこの治療」をしている方はいますか?
「もう何ヶ月も通っているのに、全然痛みが引かない」「治療が終わったはずなのに、また歯茎が腫れてきてしまった」と悩んでいる声を、実はよく耳にします。
実は、皆さんが一生懸命に通っている「歯の根の治療(根管治療=こんかんちりょう)」、つまり歯の神経の治療は、日本の一般的な保険診療で行った場合、「50%以上が再発などの理由でうまくいっていない」というデータがあります。
「えっ、半分以上も?」と驚くかもしれません。これは東京医科歯科大学などの研究グループによる調査でも明らかになっている、歯科業界ではよく知られた現実なのです。
何度もやり直しの治療を繰り返すと、そのたびに大切な歯が削られて薄くなっていきます。最後には「これ以上は治療できません。抜歯しましょう」と言われて、歯を失ってしまう……そんな悲しい結果になることも少なくありません。
さらに、歯の根っこにバイ菌が長期間住み着いて炎症が続くと、その毒素や炎症を強める物質が血液に乗って全身をめぐり、関節の病気や腎臓の病気、血管のダメージなど、全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性があることも分かっています。
そこで今回は、「なぜ何度も歯の根の治療を繰り返してしまうのか?」その理由を分かりやすく解説します。そして、ダラダラと長引かせずに、自分の歯を残すために知っておきたい「本当に高い成功率を期待できる治療の選び方」を、科学的な根拠を交えてお伝えします。
中学生や高校生の皆さんにも分かりやすい言葉で解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事の目次
1. そもそも「歯の根の治療(根管治療)」って何をしているの?
まずは、この治療の基本を簡単におさらいしましょう。
むし歯がどんどん進んで、歯の奥深くにある「歯髄(しずい)」という、神経や血管が入っている部屋までバイ菌が入ってしまうと、激しい痛みが出ます。こうなると、バイ菌におかされてしまった神経を取り除き、中をきれいに掃除しなければなりません。これを「抜髄(ばつずい)」と呼びます。
また、以前に神経を取ったはずの歯なのに、根っこの先に再びバイ菌が繁殖して、膿(うみ)が溜まってしまうことがあります。これをもう一度きれいに掃除し直すのが「感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)」、いわゆるやり直しの治療です。
この治療の目的は、ズバリ「歯の内側からバイ菌(感染源)を徹底的に追い出すこと」です。
例えるなら、「細くて暗い、クネクネ曲がったトンネルの壁にこびりついた汚れを、器具を使って手探りできれいに削り落とす作業」です。歯の根っこはまっすぐではなく、人によって複雑に枝分かれしています。そこから目に見えないミクロのバイ菌をすべて取り除くのは、実はものすごく高い技術が必要な作業なのです。

2. なぜ日本の「根の治療」は再発しやすいのか?3つの理由
では、なぜこれほど重要な治療が、日本では半分近く再発してしまうのでしょうか。理由は大きく分けて3つあります。
理由①:お口の中のバイ菌を入れない「準備」が足りていない
治療中にお口の中の「唾液(だえき)」が1滴でも歯の根っこに入ってしまうと、その中にある無数のバイ菌が再び根の奥に入り込んでしまいます。これでは、掃除をしているそばから汚れをこすりつけているようなものです。
これを防ぐために、世界的な基準として使われているのが「ラバーダム」というゴムのマスク(シート)です。
治療する歯だけをゴムのシートから出し、周りを覆うことで、唾液やバイ菌が入り込むのを完全に防ぎます。海外の専門医では使うのが当たり前(使用率ほぼ100%)ですが、日本の一般的な保険診療での使用率は10%未満とも言われています。
理由②:日本の医療保険制度の限界
「どうして日本の歯医者さんはラバーダムを使わないの?」と思われるかもしれません。これには、日本の保険制度における「治療費」の仕組みが関係しています。
実は、日本の保険診療における根管治療の費用は、世界的に見て非常に低く抑えられています。海外(例えばアメリカなど)で専門医に根の治療をしてもらうと、1本あたり10万〜15万円ほどかかるのが一般的です。しかし、日本では保険が適用されるため、患者さんの窓口負担は数千円で済みます。
歯科医院を運営するコストを考えると、非常に低い費用設定の中で、1人のお客さんに1時間も2時間もかけ、高価な道具を使って治療を続けることは、経営上とても難しいのが現実です。そのため、どうしても1回の治療時間を15分〜20分程度に短くし、何回も通ってもらう方法を取らざるを得ないという背景があります。
理由③:身体に優しくない古いお薬が使われていることも
短い治療時間でなんとか痛みや腫れを抑えるために、一部の歯科医院ではいまだに「ホルムクレゾール(FC)」という、非常に強い殺菌薬が使われていることがあります。
このお薬は、バイ菌を殺す力が強い一方で、体への悪影響(発がん性やアレルギー反応の危険性)が指摘されており、海外ではすでに使われなくなっています。日本の専門的な学会でも使用を控えるよう提言されていますが、保険診療の現場では手軽に痛みを抑えられるため、まだ使われているケースがあります。

3. 歯を一生残すために。成功率を高める「プロの治療」4つの基準
もし、「大切な歯を抜きたくない」「何度もやり直したくない」と思うなら、保険診療の枠にとどまらず、精密な治療を行っている歯科医院を検討するのも一つの方法です。
高い成功率を期待できる「精密な根管治療」には、以下のような特徴や基準があります。
基準⓪:治療前の丁寧な説明がある
専門的な治療を行う歯科医師は、治療を始める前に必ず丁寧な説明を行います。
「なぜ今、この病気が起きているのか」「現在の歯の状況はどうなっているのか」「どのような治療を行い、その場合の成功率はどのくらい期待できるのか」を、事前に分かりやすく提示してくれることが、何より大切です。
基準①:1回あたりの治療時間が長い(45分〜90分)
プロの精密な治療では、1回15分の短い治療を何度も繰り返すことはしません。1回につき45分から、長いときには1時間半ほどの時間をしっかり確保します。
時間をかけてじっくりとバイ菌を取り除くため、全体の通院回数は少なくなります。実は、何度も仮の蓋(ふた)を開け閉めする行為自体がバイ菌の侵入リスクを高めるため、通院回数が少ないこと自体にも大きな意味があるのです。
基準②:完全に唾液をシャットアウトする「隔壁」と「ラバーダム」
精密治療では、ラバーダムの使用は必須です。
もし、むし歯で歯の壁が大きく削れていてゴムのシートがかけられない場合は、まずプラスチック(レジン)を使って「人工の壁」を作ります。これを**「隔壁(かくへき)処置」**と呼びます。この壁を作ってからラバーダムを装着し、完全にバイ菌の入らない環境を整えてから、治療をスタートします。
基準③:安全なお薬での丁寧な洗浄
体に負担のある強いお薬に頼るのではなく、安全性が確認されている洗浄液(次亜塩素酸ナトリウムなど)を使い、時間をかけて根の中を何度も洗い流します。
昔ながらの「ツンとした正露丸のような独特の臭い」がする強い薬は使わないため、治療中の嫌な臭いもほとんどありません。
基準④:万が一のトラブルにも対応できる「技術の引き出し」
精密治療を行う歯科医師は、トラブルが起きたときに対応できる多くの選択肢を持っています。
- – パーフォレーションリペア(穴の修復):
過去の治療などで、歯の根っこに誤って穴が開いてしまうことがあります(穿孔=せんこう)。以前なら「抜歯」と言われていたケースですが、現在は**「MTAセメント」**という、体に優しくぴったりと固まる特殊な材料を使い、穴をきれいに塞いで歯を保存する技術があります。 - – 歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ):
どうしても根の先にあるバイ菌が取りきれない場合、歯茎の方から小さくアプローチして、バイ菌が溜まっている根の先端だけを数ミリ切り取り、お薬を詰めて塞ぐ外科的な治療法です。マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使いながら精密に行うことで、こちらも高い成功率が報告されています。

4. まとめ:歯の治療は「お家の基礎工事」と同じ
歯の根の治療は、お家を建てるときの「基礎工事」と全く同じです。
どんなに高価で美しいセラミックの歯(立派なお家)を上に被せても、それを支える根っこ(基礎)がバイ菌だらけでグラグラしていれば、やがてすべてが台無しになってしまいます。
もし、今通っている歯医者さんで治療が長引いて不安に感じているなら、一度立ち止まって、治療方法の選択肢を見直してみてはいかがでしょうか。
当院でも、「本当にこの歯は残せるのか」というご相談やセカンドオピニオンを受け付けています。「もしこの治療をした場合、あと何年くらい歯を持たせられるか」といった、将来のコストパフォーマンスについても、ざっくばらんにお答えしています。
大切な歯を守るために、ぜひ参考にしてみてくださいね。

科学的根拠となる参考論文
本コラムの執筆にあたり、以下の学術的な論文やデータを参考にしています。
- Suda, H., et al. (2011). Acceptance and usage of rubber dam isolation among Japanese endodontists.
– 概要: 日本の歯科医療におけるラバーダムの使用実態や、根管治療の現状に関する疫学的なデータを紹介しています。
- Setzer, F. C., et al. (2010). Outcome of endodontic surgery: a systematic review and meta-analysis of the literature—traditional instruments versus modern techniques.
– 概要: マイクロスコープを使用した「歯根端切除術」の成功率が、従来の治療法に比べて非常に高い(90%以上)ことを示したメタ解析論文です。
- Torabinejad, M., & Chivian, N. (1999). Clinical applications of mineral trioxide aggregate.
– 概要: 歯の根に開いた穴(パーフォレーション)の修復におけるMTAセメントの優れた生体親和性と臨床的有効性に関する基礎論文です。
- Cochrane Database of Systematic Reviews. Rubber dam isolation for restorative treatments in dental patients.
– 概要: 歯科治療、特に根管治療におけるラバーダム防湿が、治療の予後や滅菌環境の維持にどれほど貢献しているかを検証したシステムレビューです。





